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2013_02
04
(Mon)00:00

徒桜 3

はじめましての方は

まず先に

徒桜1徒桜2 をお読みください

オリキャラが出ます
そういった話に抵抗がある方はスルーでお願いします


 

何やら周囲が騒がしい

この辺りはざわざわとしているのは常だと言うのに妙な違和感が拭えない
夕鈴は首を傾げながら今日の特売品の白菜を八百屋の店主に注文した

買い物かごを下げ悠々と機嫌よく歩いているのは夕鈴
どうやら思わぬ特売に出会い安く買えたことがご満悦のようだ

おあつらえ向きに季節は冬から春へと移行してきている
目の端に映る桃色の花を咲かせる樹々の枝につき始めた蕾を見つめながら夕鈴は機嫌よく街中を歩いていた

夕鈴は先日から実家に帰ってきていた

しかもいつもならいくら遅くても里帰りの翌日には
仮の夫である国王が突撃訪問してくるものだから
今朝も来るのではないかと来襲に戦々恐々としていたものだが
お昼を過ぎてもその気配がない

どうやら里帰り前に言われた
『しばらく会えないけどごめんね』の言葉は本当だったらしい

なにがごめんなものか

黎翔が同行するたびその言動にふりまわされることは常である
休暇であるはずが休暇でなくなる
夕鈴が気兼ねなく過ごせる里帰りのはずなのに
いつもそれが終わるときには王宮でいるとき以上に気疲れしているのだ

それに里帰りに同行されるたびに下町の悪女と言われ
好奇の目にさらされるのも不本意ともいえる
実家にまで連れてくるのだから
結婚秒読みかとあの腹の立つ金貸しの息子とどちらを選ぶのだと
面白おかしく問い詰められるのにも、もう辟易だ
ただの上司だと言い張っても照れているだけだと憶測され
そうなると几鍔が黙っちゃいないなと囃したてられる
いい加減弁明するのも説明するのも疲れていた所だ

黎翔が来ないと言う事は夕鈴は完全なるフリーだ
窮屈な王宮からもがりがりと精神力を削られるお妃演技もしなくていい
おまけにここにも来ていないのだから気楽と言ったらない
最近では自宅に案内する度に青慎が物言いたげに見つめてくる
その視線のいたたまれなさったらない
可愛い可愛い弟だけれど先走るのは勘弁願いたい
未だ父親に対面していないのがせめてもの救いだろう

だが今はそれらすべてから解放されるのだ

これを喜ばざるとしていつ喜べと言うのか

今ならスキップしてくるくる回りながら家までの岐路につけそうな気がする
まあそんな事をしたらいよいよ色ぼけてしまったかと
またもそっち方面に話を持っていかれるのでしないけれど

とりあえずはまだ少し時間がある
昼時を過ぎた今ならばあの店は空いているだろう
夕鈴は内心うきうきしながら行き慣れた飯店への道を進んだ

「明玉いる?」
「夕鈴!」

若い娘特有のきゃあと言う喜び声をあげて再会を喜ぶ
以前は此処で夕鈴も働いていたと言うのに
すごく懐かしいと感じるのは
日々の出来事があまりにも日常からかけ離れているからだろうか

ひとしきり再会の喜びを味わったあと明玉は夕鈴に問いかけてきた

「そういや夕鈴の所はまだなの?」
「へ?何が?」
「その様子じゃまだみたいね」

ふっと溜息をつくような明玉を訝しく思いながら夕鈴は理由について問い詰めた

「一体何?まだってどういうこと?」
「…どうやら王宮からお触れが出てるみたいなのよ」
「お触れ?」

それが一体先程の話とどうつながるのか分からず
首を傾げている夕鈴に忌々しそうに顔を歪めた明玉が説明をしてくれた

明玉の話によると
夜半過ぎに急に街中に兵が増員されたのだという
それも一人二人などではないかなりの人数だと言う
それらがここ周辺をくまなく探しているのだそうだ

「何を探してるんですか?って聞いてみたんだけどね」

お前には関係ない事だと一蹴されてしまったらしい

「おかしいわよね!わざわざ捜索してこっちに迷惑かけておきながらそれが何かすら言わないなんて!」

よほど何か不快な事をされたのかもしれない

そしてざわざわと街中が妙に騒がしい理由はこれの所為かと合点がいった

 * * * * *

トントントンと軽快で規則的な包丁の音が聞こえる
もうすぐ青慎が帰ってくる時間だ
夕鈴は先程の特売で買った白菜を等間隔で切りながら
鼻歌一つ出そうかとそう思っていた時だった

ドンドンドンと随分と乱暴に玄関の戸が叩かれる
その乱暴な音に眉をしかめながら夕鈴は玄関先にまで出た

「…どちらさまですか?」
「警吏だ。至急ここを開けられよ」
「…はあ」

ぎいっと玄関の門があけ放たれる
そこにいたのはいかつい顔をしたいかにもな感じの警吏だった

「…あの?何かご用ですか?」

夕鈴はドキドキしながら聞いてみた
実際の所夕鈴が現在国王の臨時妃のバイトをしていると言うのは知られていないし
家族にだって話していない
だからこうして目の前に警吏が居ることが不思議でならない

下町の警吏と言えばお金を渡さなければ基本何もしないただのお飾りだと認識している

しかも下町の人間相手と言う事で居丈高にふるまったり
中には特権意識をふりまわして無理難題を突き付けてくる者もいる
だからこそ几鍔のような下町のゴロツキを従えて街中を仕切っている者がいるのだ

悔しい事にその事に関しては几鍔は慕われている

夕鈴が几鍔の顔を思い出し
むうっと眉を顰めていると

「家の中を検分させてもらう」

その警吏は無理矢理家の中に上がり込んできた
もちろんそれに驚いたのは夕鈴だ

「ちょっと何を…!!」

そう言いきる前にずかずかと上がり込んできた警吏は
家中の扉を開けその中を確かめていく

―― 一体何だって言うのよ!!

夕鈴は憤慨しながらもその後ろをついていく
家の中を壊されないかきっちり確認しなくてはいけないからだ

ひとしきり家中をくまなく見て回った警吏は

「では失礼した」

ただその一言だけ言って外に出て行った

――失礼にもほどがあるだろう!!

そう思い一言何か言わなくては気が済まないとその背中を追おうとした時だった

「おとといきやがれ!!」

夕鈴はその言葉の発された方向をばっと振り向くと
隣家の住人の女性がこれまたそこから出てきた警吏に悪態をついていた所だった





徒桜4につづく

次週更新分は連載はお休みします

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