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2013_02
25
(Mon)00:00

徒桜 5

はじめましての方は
まず先に

徒桜1 ~ 徒桜4 をお読みください





客間に運んできたその人物の手当てをしながら
夕鈴はあちらこちらに巻かれてある包帯をみつめた
体中にある傷跡は新しいのもあれば古いのもある
その傷跡の大きさも深さも大小様々だ

その身体にはしる傷の多さに夕鈴も治療した医師も息を飲んだ

大きなものはそれらを負った時の怪我のひどさを物語っている
さらに現在、脇腹に巻かれてある包帯の下はまだ縫合したばかりだ
先程とり替えたと言うのにじんわりと紅くまだ色を滲ませている

あれだけ拒んでいた医師の診察も治療も気を失っているうちに済んでしまった
医師の見立てでは縫合はしたが
傷の深さからも失った血液が多くここ数日が山場だと言う

夕鈴は眉をしかめながら丁寧に身体を拭っていく
ここでもまた一つ夕鈴を驚かせる出来事があったのだが
それはまた別に置いておくとして

「――それにしても綺麗な髪」

その人の髪の色は見事と言えるほどの金色だった

黄金色に輝くその髪に夕鈴は感嘆の溜息を零す

汗と血と埃で汚れていたと言うのに
覆面に覆われていたそれは綺麗な輝きを見せている

綺麗な色をしていると言うのに
扱いは随分とぞんざいなようだ
髪の毛の長さがあちこち違っている
明らかに自分で適当に切っているであろう髪
てんでバラバラに飛び跳ねていると言うのに
それがまた似合っていると言うのが不思議なものだ

綺麗に整えて梳れば更に輝きを増すだろう
その髪色に気をとられそうになるが
その下にある素顔も造作の美しいものだった

なんとか綺麗に身体を拭い終わった夕鈴はふうと溜息を零す

夕鈴の家にたどり着くまでに必死の思いで逃げてきたのだろう
それにしても因果なものだと思う
王宮を襲ったその犯人が身を隠した先が
現在後宮内で臨時花嫁をしている者の自宅へ逃げ伸びてくるだなんて
本人が言ったわけではないが
状況証拠の全てがその犯人がこの人だろうと言う事を物語っている

この事が黎翔やその周りに知られればどうなるのだろう
そのことの危うさなんてものは言われなくても分かっている
けれど夕鈴はこの人を警吏につきだすと言う事が出来なかったのだ

気を失うように倒れたその時にあの時あの場面でこの人は泣いたのだ
それはただの一筋だけだったし近くにいた夕鈴にしか分からなかったのだが
それと同時に呟いた人の名前と謝罪の言葉

お人好しなのは言われなくてもわかっている
今回の事は今までで一番のことになるだろう
黎翔を襲ったかもしれない人物
現在黎翔の身がどうなっているかもわからずやきもきしているというのに
その犯人を匿う真似をしているのだ

どのような責務が身にかかるのかと言う事も理解している
でもそれでも見殺しにすることなどできなかったのだ

「…どうしたらいいんだろう」

夕鈴がぽつりと呟いた言葉は誰にも聞かれることはなかった

* * * * *

朝、青慎を学問所へ行くのを送り出した後

夕鈴は驚愕に目を見開いている

「来ちゃった」

ちゃめっけたっぷりににこやかに目の前で突然の訪問をしたその人は
昨日からさんざん気をもまされた黎翔その人だった

「へ、陛下?」

おもわず『陛下』と呼んでしまった事に気が付き
夕鈴はばくりと両手で自分の口元を押さえて周囲を窺った
どうやら周囲に人はおらず夕鈴の失言は聞かれていなかったようだ
そんな夕鈴の様子を愉快そうに見ていた黎翔はくすりと笑みを零した

「うん。元気にしてた?」
「元気は元気ですが…」

そこではたと気が付いた夕鈴はおもむろに黎翔の身体を触りだした

「ゆ、夕鈴!?」

夕鈴のいきなりの奇行に戸惑いながらも
ぺたぺたと触れられるがままになっている

「へ、いえ、李翔さんは怪我されてないんですか!?」

その言葉にああ、と黎翔は夕鈴の行動の意味を知った

「大丈夫だよ。本当は昨日のうちに知らせたかったんだけど色々忙しくて。心配させちゃったね」

相変わらず飄々と話すそのいつもの姿に
夕鈴はほうと身体から力が抜けるのを感じた

「良かった…」

その言葉に黎翔は更に笑みを深くした

「あ、あの」
「うん?」
「王宮に賊が侵入したって噂で聞いたんですけど」
「ああ、それなんだけど―――」

次に言葉を発しようとした時はたと黎翔が言葉を途切れさせた
その様子に夕鈴は首を傾げながら次の言葉を待つ間に黎翔を見上げた
そしてその一瞬の間に変わった黎翔の表情に息を飲んだ

「夕鈴、怪我してない?」
「は、はい」

黎翔はそうかとつぶやいて少し考え込んだ後おもむろに夕鈴の自宅内へと足を踏み入れた

「ちょっとお邪魔するよ」
「え!?李翔さん!?」

進む先から自宅内の扉を開けて中を伺っていくその姿を
夕鈴は一体何なんだと後を追いかけていくことしかできない

そして一通り自宅内を探して終わった黎翔は再び元の場所へと戻ってきた

「い、一体何なんですか昨日からもう!」

黎翔の突然の行動に後を付いていくだけだった夕鈴は軽く息を切らせている

「――血の匂いがする」

その言葉に夕鈴は心臓がわしづかみされるほどに驚いた

「ち、血の匂い、ですか?」
「――ああ」

再び黎翔は家の中へと視線を巡らせた
あまりにもその視線の強さに夕鈴はただただ身体を強張らせることしかできない

「弟君とかお父さんとかも怪我はしてない?」
「は、い…」
「――そう」

神妙に何かを考えるように押し黙った黎翔を夕鈴はただ見つめていた




徒桜6に続く

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C.O.M.M.E.N.T

No title

続きめっちゃ気になります!!
近いうちに、続きおねがいします!!

2013/02/26 (Tue) 08:19 | 陽向 #- | URL | 編集 | 返信

Re: No title

陽向様

ありがとうございます
そう言っていただけるとやる気が増します♪
次回も月曜更新です!
もうしばらくお待ちくださいませね


2013/03/01 (Fri) 02:17 | ももひろち #- | URL | 編集 | 返信

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