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2013_03
04
(Mon)00:00

徒桜 6

はじめましての方はまず先に

徒桜1徒桜5をお読みください




黎翔は武人だ
戦を勝ち抜き死線をくぐりぬけ今の地位を得た

そこに至るまでは多くの敵を屠り
血の滴る中で生活していた
今でこそそう言った死地に赴くことなどほとんどないが
現在の玉座よりもそれはずっと慣れ親しんだものだった

そんな生活をしていた黎翔が嗅ぎ慣れた
この独特の匂いに気付かないはずがなかった

夕鈴はそれを知らない
だからこそ黎翔の発言に目を見開く
後ろ暗い事をしている自覚があるだけに夕鈴は動揺した
そんな動揺を黎翔が見逃すわけがないと気付かないまま

「――ところで」
「え?」

「『昨日からもう』ってどういう意味?」
「あ」

その後は黎翔に怖いほどの笑顔で問い詰められ
逃げ腰になりながらもほうほうの体で昨日の警吏の行動を吐かされた

それを告げている間に更に黎翔の笑顔に凄味が増していったことには
夕鈴は気が付かないふりをした

その事を吐かされた後
黎翔はとてもとても綺麗な笑顔を振りまきながら

「ちょっと用事を思い出したから」

といって王宮に帰るのだと出て行った
夕鈴は昨日の警吏たちの身を案じたが
まあそんなことする義理もないかと家の中に戻り出かける支度をする

特に黎翔が無事だったと言う一つの懸念が消え去った事が
夕鈴に少なからず黎翔の行動の意味を深く考えることの隙を与えていた

だからこそ気が付かない

昨日のうちは後宮内の警備に駆りだされていた浩大が
こっそりと夕鈴の護衛についていると言う事に

 * * * * *

夕鈴は下町の道を進みながらふうと溜息をついた

まさか黎翔に気付かれるとは思ってもいなかった

「血の匂い、か…」

まさかそんなことで気が付かれるなどと思ってもいなかったのだ
それが分かるほどの研ぎ澄まされた嗅覚を育て上げたと思われる
黎翔の過去をふと垣間見て夕鈴は少し眉をひそめた

それでもと意識を切り替えるためふるりと頭を振った後
とある建物の扉を開ける
そして建物内に入り込んだ瞬間に夕鈴の眉間に皺が寄る

「几鍔…」
「よお」
「何であんたが此処にいるのよ」

そんな言葉を投げかければ目の前の男は鼻で笑った

「なんでってここを提供してやったのはおれだろうが。その恩人に対して随分な言い草だな」
「ああ~はいはい感謝してるわよ」

おざなりに感謝の意を唱えると
心が籠ってねえと一喝されたが気にしない事にしておく

「ほお~?よくそんなことが言えるなあ。ここを貸してやってるのは誰だと思ってるんだ」

夕鈴はぐっと言葉を詰まらせた

そうなのだここを借りるにあたって頼ったのはほかでもない目の前にいる男だ

あの後、あの人物を客間に連れて行ったはいいが
このままここにいてはいつ黎翔が実家に訪れるか分からない
どうしようかと思案に暮れている中で
頭に浮かんだのが几鍔だった

几鍔ならば顔が広い
こういった隠れ家的な家だとか
警吏に知らせないような口の堅い医師も知っているだろうと思ったのだ
借りを作る羽目になってしまうのはとても嫌だったが
背に腹は代えられない
一言言いたいのを飲みこんで何とか穏やかに(夕鈴の中では)頼み込んだ

「あいつ今警吏たちが探してるっていう奴だろう?」

その言葉に夕鈴はぎょっとする

「ちょっと!警吏に話したりしてないでしょうね!」

すると几鍔は再びふんと鼻で笑った

「話してもいいがな。今回のあいつらのやりようにはみんな腹に一物据えかねてるんだ」

どうやら夕鈴の自宅でされた事をみんなされていたようだ
いい仕返しになると嘲う几鍔に眉をしかめながらも
夕鈴は持ってきた物を近くの卓に置いた

「――でもまあそれでも深入りすんじゃねえぞ」
「…分かってるわよ」
「へっ。どうだか」
「あんた何がいいたいのよ」
「あ?言わなきゃわかんねえか?」

言わなくても分かっている
どうせ人がよすぎだとかおせっかいだとか言われることが分かっている
だから夕鈴は口を噤んだ

「――でもまあ助かったわ」
「何だ?お前が素直だと気持ち悪ぃな」

揶揄するような几鍔の言葉にきっと睨みつけると
ふっと表情を改めた顔をしてぽんと頭に手を置き

「まあ分かってるんならこれ以上は何も言わねえよ」

珍しく殊勝な態度の夕鈴に毒気を抜かれたのか
几鍔の方も皮肉な態度は成りを潜め
気遣いを見せる態度で部屋を出て行った

 * * * * *

夕鈴はふうと溜息をついて持ち込んだものを片付けていく
日用品だとか包帯だとかここには置いていない
だから夕鈴は必要だと思う物を家から持ってきたのだ

片付けながら夕鈴は寝台で眠るその人物に視線を向ける

今は穏やかに眠っている
まだ目覚める気配はない

まだしばらくは大丈夫かと
身体を拭く用意をするため部屋を出て行く

いつ起きてもいいようにと水差しと湯呑み
次に大きめの手桶に手ぬぐいを持って部屋に戻ってきたところだった

寝ているその人物の身体がもぞりと動くのを視界に入れた
夕鈴は慌てて近くに寄る

「…う…」

少し呻いた後でその人物がゆっくりと目を開く

夕鈴はその姿にただ茫然と見つめた
倒れる前に見てはいたけれどこれほどだったとは

目を見開いたその人は
見惚れるような金糸の髪と空の色を思い出すような蒼い瞳をしていた





徒桜7につづく


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C.O.M.M.E.N.T

No title

読みましたよー!!
男の正体気になります

次の更新待ってますね~(^_^)/

2013/03/04 (Mon) 04:00 | 陽向 #- | URL | 編集 | 返信

Re: No title

陽向様

さっそくのコメントありがとうございます!
夕鈴サイドは次回お休みで
次話は陛下のターン
今回も月曜更新になります♪

2013/03/07 (Thu) 10:53 | ももひろち #- | URL | 編集 | 返信

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