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2013_03
11
(Mon)00:00

徒桜 7

はじめましての方は
まず先に

徒桜1徒桜6をお読みください





黎翔はばさりと先程処理が終わったばかりの書簡をおもむろに横に置いた
そしてはあと溜息をついた

「陛下、お茶を用意させますので一休みされてはいかがですか?」
「ああ…」

そう言った李順の提案を聞きいれながら
黎翔は凝り固まった眉間を軽くもんだ

黎翔の仕事は数日前から確実に増えている
それは先だっての襲撃事件の処理によるものが多数で
破壊された調度品の数々や室内の修理
賊を見つけるために城下に派遣した横暴を働いたとされる兵たちの処分

そしてその襲撃犯とされる人物は未だに見つかっていない

いや、いなかったと過去形にしておこう

「…一体何をしてるんだ夕鈴は…」

ぼそりと溜息をつきながら吐き出した言葉は
先程ニヤニヤしながら戻ってきた浩大の報告に起因する

 * * * * *

「――犯人が見つかった?」

「そそ、お妃ちゃんが匿ってた」

「はあ?」

頓狂な声を発したのは李順

そして黎翔はその言葉に一瞬だけ虚をつかれた

そして何をやっているんだとがっくりと肩を落としたことは当然ともいえよう

手負いとはいえ命を狙った人物と狙われた人物がお互いの素性も知らず
次いでは治療されるものと看護するものに立場が変わった

幸いなことにその犯人には夕鈴が妃だと知られてはいないようだ
まさか国王の寵妃が実はバイトで庶民などと考えもつかないだろう
だからこそ今回の事は本当に偶然の産物ともいえるのだろう
夕鈴の素性は本当にごく少人数にしか周知されてはいないし
その犯人が知る由もないのだ
そう。知る由もないのだが
ただいつも気が気ではない

あの日政務の合間を縫って夕鈴の様子を見に自宅へと訪ねてみれば
夕鈴は王宮に襲撃があった事は噂で聞いていたのか知っていたようだった

いくら鈍いとはいえおあつらえ向きに重症な怪我をした
怪しげな人物がこの騒動の犯人だろうと言う事はいくらなんでも気付くはずだ
それを知りながら匿っていると言う事だ

自身がどんな危険な橋を渡っていると言うのかを知ってか知らずか
いや、夕鈴の事だからきっとそのことにも気が付いているはずだろう

そのことを考えると更に深い溜息をつきたくなる
李順はその報告を聞いて随分とおどろおどろしい雰囲気を発していた
しかしその事に関しては黎翔はフォローを入れる気にはなれない

暗殺者を、敵を匿うなどまずあり得ないからだ
それは即ち黎翔への反旗ととらえられるからだ

「随分と甲斐甲斐しく世話しているみたいだよ」
「――へえ」

知らずに声が低くなってしまうのは仕方がない

こと夕鈴の事に関しては冷静ともいえる判断ができなくなることがままあるのだ
大事な大事な掌中の玉とも言える存在が
自分以外の者に心を配ることなど許しがたいともいう感情も
心の奥底に燻っていて今にも燃え広がらんとしている

ただ現時点でそんな独善的な事を言っても仕方がないし
そもそも夕鈴はまだ黎翔の手には落ちてきてはいない

「それで、どんな様子だ」
「んー?とりあえず暴れもせず大人しく面倒みられてるよ。今のところお妃ちゃんに対して何か危害を加えるとかはしない感じかな」
「…そうか」
「まああんまり近くまで行くとどうやら気配に感付くっぽいから詳しい会話までは探れてないよ」
「浩大の気配に気付くほどの手錬れということか?」
「そうだね。そこそこの腕は持ってるみたいだね」
「……」

確かにそうだろう
でなければそう簡単に暗殺の依頼などされるわけがないし
後宮に入り込む事も出来ない

黎翔はあの時のあの犯人の動きを思い出す
完全に捕えたと思っていた
実際軽くない傷も負わせることができた
それを出し抜かれたのだ
今思い出しても忌々しさが募る

「とにかくそいつの素性を探れ」
「りょーかい」

そう飄々とかえして報告を終わった浩大が部屋を退室する
その後ろ姿を見送りながら
黎翔は椅子の背もたれに身を預け片手で顔を覆った

本当なら今すぐにでも町に降りて夕鈴の元に駆けつけたい
危険はないかと確かめてこの腕の中で護りたい
それができないことがひどくもどかしい
望んで得たこの地位が黎翔の邪魔をする

「…全くもどかしいものだな」

顔を覆っていた手を離しその掌を見つめる
血に濡れてでも奪ったこの地位は自身を縛りつける
そのことに不満はない

けれど、と黎翔は思う

もしもこの手に王位が無ければこれほどまでに欲しいと思う者を
もっと簡単に手に入れられるのではないかとそんな事をふと考える

だがそれではきっとあの出会いすらなかったのだろうと理解している
どれだけの偶然が重なりあの出会いに繋がったのか
それは黎翔が国王でなければ無かった事だし
彼女が自分の本性に気付く事もなかった
ひとつ掛け違えただけで何もかもが無に帰してしまう

何よりもあの選択を再び迫られたとしても
きっと同じ行動をとるだろうと確信している
そうでなければこのように王位を継ぐ決心などありはしなかった

「なんとも皮肉なものだ」

そう呟いた声は誰にも聞かれることはなかった




徒桜8につづく
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No title

読みましたよー
夕鈴もおせっかい?ですね(>_<)

次も月曜更新ですか??

2013/03/11 (Mon) 02:54 | 陽向 #- | URL | 編集 | 返信

Re: No title

陽向様

お読み頂きありがとうございます!
おせっかい夕鈴の本領発揮は
まだまだこれからが本番ですよ~

次回も月曜更新です♪

2013/03/14 (Thu) 09:52 | ももひろち #- | URL | 編集 | 返信

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