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2013_04
08
(Mon)00:00

徒桜 11

はじめましての方は
まず先に

徒桜1徒桜10をお読みください





夕鈴は怕を背に庇うように両手を広げ黎翔へと対峙する

「陛下!止めてください!」
「…何故?これは君を殺そうとした」
「だ!だからこそです!」

事実関係の裏を。夕鈴を、妃を狙ったものを探りださなければならない
問い詰められながらも考え出したそれを夕鈴はその事を黎翔に訴えかける
それが怕が生き残る唯一の道だと思えたからだ
だけれども黎翔の返答が無情に響く

「良いから退くんだ夕鈴」
「だ、駄目です」
「…夕鈴」

すうと黎翔の顔からも表情が消える
夕鈴を傷つけまいとして下げられていた剣を黎翔はゆっくりと動かしていく

そうして夕鈴の目の前に剣が付きつけられた

夕鈴は目の前に迫る剣先を目を見開いたまま凝視した

「夕鈴」

黎翔の声にびくり、と肩が震える
思わずギュッと目を瞑り身体はそのままに顔だけを背けた

黎翔が夕鈴へと剣を向けた
その事に少なからず動揺するも

それでも黎翔が怕を切るのを見たくなくて
怕がこれ以上傷つけられるのを見たくなくて
夕鈴は黎翔の前に両手を広げたまま立ちふさがる
かたかたと手足が震えるのを止められない
それでもここを退くと言う気は起らなかった

しばらくその状態が続く

黎翔は夕鈴をじっとつぶさに観察する
顔は青ざめて恐怖と緊張で手足が震えている
その姿に顔を顰めた後
ちらり、と夕鈴から怕の方へと視線を向けたと思うと

黎翔は大きな溜息をはあっと吐いた
剣を鞘に収める音を聞いて
夕鈴は逸らしていた顔を黎翔の方へと向けた
その瞬間に合わさった視線に夕鈴は息を飲んだ

「好きにするといい」
「へい、か…」
「ただし監視は付けさせてもらう」

そうして黎翔は去り際にそう言い放って部屋を出て行った
その瞬間へたりと夕鈴は床に座り込んだ

去り際に垣間見せた黎翔の表情が酷く印象に残る
いくら狼陛下を演じているとはいえ夕鈴には
あんな冷たい視線を向けてくることはなかった

――きっと呆れられた

それでも怕が殺される姿を見たくなかったのだ
お人好しもここまでくればもう重症だなとひとりごちた

 * * * * *

夕鈴はぼんやりと掌に収まっている湯呑みを眺めていた

いまだ突き放すような黎翔の言葉が頭の中に響いている
そうして垣間見た黎翔の辛そうな顔
それをさせてしまったのは他ならぬ夕鈴

そんな顔をなどして欲しくなかったのに
側にいると、ずっと味方でいるとそう言った自分自身がそれを裏切ってしまった
この件が終わればきっと自分は解雇されるのだろう
解雇だけならばいいがもしかしたら死罪かもしれない
そのことにふるりと体を震わせる
黎翔とももう会う事はないだろう
自業自得とはいえその事実が胸を締め付ける

そんな暗い気持ちを抱えたまま夕鈴は怕へと視線を向けた

あの後、蹲った怕を急いで確認すれば
傷口を抑えたままの怕は蒼い顔で未だ黎翔が去った後を睨んでいた
そのままその目線は夕鈴へと注がれ
蒼い瞳が夕鈴を再び見据える

「何故…助けた」

その言葉には夕鈴は返事をせずに怕に手を差し伸べた

「…掴まって」

そうしてふらつく怕を支えて夕鈴の寝台に押し込めると
怕はそのままぷつりと意識を手放した

そのまま寝台の近くに椅子を移動させ怕の近くに寄る
しばらくして夕鈴の部屋に黎翔が手配してくれたのだろう医師が現れた
そうしてそのままそのまま怕の手当てを施してくれた

――ごめんなさい

あやまってもあやまっても謝りきれない

きっともう黎翔は夕鈴の謝罪の言葉すら受け付けてはくれない
裏切り者に厳しい狼陛下がそれを許すはずがない
涙がこぼれ落ちそうになる
それでも自分が泣いていい権利などないのだと瞼を閉じてぐっとこらえた

そんな時に夕鈴へと声が掛けられた

「…泣いているのか?」

その声にハッとして声の主の方へと顔を向けた

そこにはぼんやりと目を開けた怕が居た

「な、泣いていないわ」
「…そうか」

沈黙が続く
それを破ったのは怕の言葉だった

「何故助けた」
「…何故って」
「そうだ。狼陛下に盾突いてまで私を庇う理由などないだろう」

そう。夕鈴は怕を庇う理由などなかったに等しい
ただ数日間だけ、けが人を拾い看病してきただけだ
命をかけてまで庇うほど付き合いだって長くはない

「あのまま夕鈴ごと切り捨てられてもおかしくなかった」
「…そう、ね。その通りだと思う」
「なら何故…」
「死なせたくないって思ったの」
「え?」
「このまま怕に死んでほしくないって思ったって言うのじゃ理由にならない?」
「……」

夕鈴の返答に絶句したままの怕が茫然としたまま話す

「お人好しって言われるだろう」

その言葉に夕鈴は顔をむくれさせ口を尖らせる

「自分でもそう思うんだから仕方ないじゃない」

ぷいと顔を反らした後そのまま横目で睨む
堪えきれずにそのままふっと互いに目を合わせ苦笑し合った

さわさわさわと心地よい風が寝室を通り抜ける

下町で怕を看病していた時期の
まだうっすらと寒さの残るものではなく
少しばかり春の陽気を運ぶ風が夕鈴たちの頬を撫でていく

その風の流れを受けとめながら怕がぽつりと話しだした 

「本当は気が付いていた」
「え?」

怕がひたりと夕鈴を見つめる

「私を見た表情から私を匿ったことは意図的ではないと」
「……」
「いつでも警吏や国王に知らせられる立場にいたのに夕鈴はそれをしなかった」
「……」
「そうだよな。自分の命を狙ったって知ってたら匿ったりしないよな」
「そう、ね…」
「夕鈴は馬鹿だなあ」
「う、うるさいわね!性分なんだから仕方ないじゃない!」

ぷうとむくれる夕鈴に怕は困ったように見つめる

「ごめん」
「え?」
「酷い事言ってごめん」
「…私の方こそ騙すような形になってごめんなさい」

辛そうに歪んだ怕の言葉に夕鈴も思わず謝罪の言葉を口にした




徒桜12へつづく


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