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2013_04
15
(Mon)00:00

徒桜 12

はじめましての方はまず先に

徒桜1徒桜11をお読みください

予約投稿の日程を間違えていました
15日0時~2時の間にこられた方申し訳ありませんでした





神妙になった二人に交わされるのは沈黙だけだ
妙に押し黙ったまま二人は口を噤む
そんな空気を振り払ったのは夕鈴の部屋を訪れた侍女の言葉だった

「お妃様、清拭のご用意が整いました」
「あ、ええありがとう。此方へ持ってきてくれるかしら」
「畏まりました」

そうしていつも夕鈴に仕えてくれる侍女たちが夕鈴の寝室へと足を踏み入れた
持ってきてくれたお湯の入った器と布を夕鈴が受け取ろうとすると
侍女たちにやんわりと断られにこりとほほ笑まれた

「いけませんわお妃様」
「え?」
「そうですわ。このような事、陛下がご覧になったらどのように思われるか」
「え?ええ?」
「私たちにお任せくださいませ」

そう言って侍女二人は怕の方へと向き直る
そうしてにっこりと怕へ向かってほほ笑んだ

「ではお客人殿、お身体、拭わせていただきますわね」
「え?」

うふふふと怕に向かってほほ笑んだ侍女二人
虚をつかれた怕は侍女の笑みを理解すると同時に
その表情にうっすらと怯えを浮かばせた

 * * * * *

「とてもお綺麗な御髪ですわね」
「ええそれに瞳のお色もとてもお素敵ですわ」
「そうですか……」

怕の身体を拭ったあと
きゃっきゃと楽しそうに次は怕の髪をいじっている
普段は夕鈴をこれでもかと着飾らせたいけれど
当の本人は全くもってそう言った事に興味が無い
その欲求不満を晴らすかのように怕をおもちゃにしているように見えるのは
傍から見ても気のせいではないとは思う

反して当事者である怕はぐったりとされるがままになっている
最初は抵抗していたもののか弱い女性が相手というのもあって
どうやら無駄な抵抗はやめたようだ
こう考えると怕も相当のお人好しではないかと思ってしまい
夕鈴はくすりと笑ってしまった

「それではお妃様、何かあればお申し付けください」
「ええ、ありがとう」

そういってひとしきり怕で堪能した侍女たちは退室していった
残されたのはぐったりと力尽き寝台に身体を埋める怕と
それを苦笑しながら見つめる夕鈴の二人

「お疲れさま。すっきりしたでしょう?」
「ああ、…ありがとう」

引き攣りながらお礼を言ってきたその表情には夕鈴は気が付かないふりをした
ほとんどの事を侍女がしてしまい
やることが無くなった夕鈴は少しばかり周りに目をやり
ふと気が付けば夕鈴を見つめてくる怕が居ることに気が付いた

「どうかしたの?」
「…いや、不思議だと思って」
「何が?」

じぃっと見つめてくる怕に夕鈴はこてんと首を傾げる
そうしてしばらく逡巡した後で怕はゆっくりとその口を開いた

「…夕鈴は、この髪を見てどう思う?」

自分の髪をつまみあげて怕はそう夕鈴に訊ねた

「ええっと…綺麗な髪ね?」
「…それだけか?」
「え?それじゃ綺麗な色ね?」
「……そう…それじゃこの目の色は?」
「とても綺麗な色だと思うわ」
「…そうか」

怕はそう言うとふうと溜息をつき身体の力を抜いた
その言動にわけが分からず困惑したのは夕鈴だ

「髪の毛と目の色がどうかしたの?」
「怖くないのか?」
「何が?」

本当に何を言っているのか分からないと言う夕鈴の表情に怕は苦笑した

「私の故郷ではこの色は鬼の子と言われ忌み嫌われた」
「そう、なの?」
「ああ」

だからこそ故郷では腫れものを触るような扱いだったのだと言う

「でも、西の方にはそう言った色合いの人たちはたくさんいるって聞いたわ」

実際に夕鈴は黎翔の謁見に伴ってそう言った人たちを見たことがある

「そのようだな」
「だったら怕だってご先祖さまの中にそう言う人が居たんじゃないの?」
「ああ。私もそう聞いていた」

だけれど、と怕は言葉を続ける

「私が居た村はそれこそ辺鄙な山奥で、こんな姿をした私はさぞかし恐ろしくうつったのだろう」

家系の中にその血筋が居たからといってそれが理由になるわけがない
なおかつ閉鎖された田舎の奥地でただ一人だけ見た目が違っていたのだから
それが見慣れない色を纏っていたのならば尚更なのだろう

「…それで怕、と名付けられたの?」
「え?ああ、いやこれはまた違う」

『怕』という名前には鬼の子や恐ろしいものと言う意味合いが込められている
そんな名を幼子に付けたのだと思うと夕鈴は思わず眉を顰めた

「そんな、ことはなかった」

何かを思い出すようにぎゅっと胸元を握り締める怕を夕鈴は不思議に思う

「いつもそこを握るわよね」
「え?」
「気が付いてない?なにか考えてる時にそこを握ることが多いわよ?」
「ああ、そうか…」

少しばかり切なそうに眉尻をさげた怕が胸元からとあるものを取り出した

「…これって」
「ああ。故郷を出た時からずっと身につけてる…御守りみたいなものだ」

それは以前に夕鈴が怕の目の色と同じだと言った飾り玉だった

「…大切なものなのね」
「ああ」

目を閉じて何かを堪えている怕に夕鈴は聞いてみたかった事を訊ねてみた

「それって楊達(ようたつ)って人と関係ある?」
「…なぜ、それを…」

その名前を聞いた途端に怕は驚愕に目を見開き
横たえていた身体を勢いよく起き上がらせた

「…どこで、聞いた」
「え、ええ?」
「その名前を何処で知った」

そして厳しい顔を向けてくる怕に夕鈴はたじろいだ

「え、ええと、怕が私の家で倒れたじゃない?その時に呟いていたんだけれど…」

その怕の目線の厳しさに戸惑いながらも夕鈴はそれを知った経緯を話す

「私が、そんな事を?」
「え、ええ」

怕の勢いに押されこくこくと首を縦に振る

「…そうか…」

ふうと身体の力を抜き再び身体を横たえた怕は視線を逸らし外を見つめた
再びぎゅうと胸もとの飾り玉を握り締めて夕鈴に問いかける

「…ここにもあの樹があるんだな」
「え?」
「あの、桃色の蕾を付けている樹だ」
「ああ、桜ね。蕾も大きくなってきたからもう少ししたら咲き始めるんじゃないかしら」

「…そうか」

樹に目線をやりながらもどこか遠くを見つめている怕に
夕鈴は声をかけるすべを持たなかった



徒桜13につづく
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