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2013_04
22
(Mon)00:00

徒桜 13

はじめましての方はまず先に

徒桜1徒桜12をお読みください






しばらく微動だにしないまま沈黙の時が流れていく
それを破ったのは怕からだった

樹に向けていた視線を夕鈴の方へと移す
そうしてじっと見つめたまま夕鈴へと問いかけた

「国王とは?」
「え?」
「あの後国王とはどうなった?」

そう言う怕の言葉に夕鈴は一瞬虚をつかれると
気を取り直した夕鈴は眉を下げてその問いに返した

「…どうもこうもしないわ。きっと呆れられてしまっただろうし」

そう苦笑しながら話す夕鈴を怕が見つめる

「夕鈴は国王が好きなんだな」
「えっ!?」
「何だ?夫婦なんだからそんなに動揺することはないだろう」
「そっ!そうね!」

そう言えば怕は夕鈴が臨時花嫁だと言う事を知らないのだと言う事に
今更気が付き慌てて取り繕う

そんな姿を空元気かと勘違いしたのか
怕はそんな夕鈴を見てはあと溜息をつく

「今回こそ私の所為で喧嘩させたな」
「そんな事」
「馬鹿だなあ…」
「なっ!!馬鹿ってまた言った!」
「私のことなんて見捨ててくれてよかったのに」
「そう言うわけにはいかないわ」
「…ほんと、お人好しだ…」

再び向けられた困ったような怕の目線に夕鈴は俯く
なんだかんだと言って臨時花嫁の件を黙っている時点で
夕鈴は怕に一つ嘘をついているのだ

怕は知らない
黎翔との関係が怕の思っているよりも脆く崩れやすい事も
簡単に夕鈴の今の立ち位置がなくなると言う事も

だからこそ心配してくれている怕に後ろめたくなってしまう
夕鈴に呆れた黎翔がいつ何どき解雇を言い渡すのか知れない
そんな所業をしてしまったのだと理解しているだけに
その宣告を刻一刻と恐々と待ち続けているだなんて

こうして怕の世話や手当を寛容してくれているのは
黎翔の温情に他ならない
本来なら王宮を叩きだされていてもおかしくない状況なのだから

そんな夕鈴に怕は再び視線を樹に向けて夕鈴に話しかけた

「なら、仲直りは早くした方がいい」
「…怕?」
「人との別れなんてある日突然訪れるものだ」
「……」
「ましてや相手は国王。私が言えた義理じゃないがいつ命の危機が訪れるか分からない」
「そう、ね…」

そう同意した夕鈴に怕はちらりと横目で視線を移したあと
上を向きゆっくりと一つ瞬きをした
何かを思い出すようにゆっくりと言葉が紡がれる

「ならその日その日を大切にしないと」
「……」
「返事は?」
「…うん」
「いい子だ」

そう同意した夕鈴に怕はあわい微笑みを向けた

 * * * * *

そうして何事もないまま数日が過ぎ
怕の呆れた声が夕鈴へと向かう

「まだ仲直りしていないのか」
「う、うるさいわねタイミングって言う物があるのよ!」

そう言う夕鈴にはあと怕が溜息をつく

「後になればなるほど言いにくくなるぞ」
「…分かってるわよ」

夕鈴とてこの数日間何もしてこなかったわけではない

だがそれでもきっかけがつかめず黎翔への目通りも申請できないままでいた
もちろん政務室への立ち入りもあの時よりぷつりと途絶えさせている
体よく怪我人の看病があるからと逃げていると言う理解はしている

そんな夕鈴に黎翔もそして李順ですら何も言ってはこないのだ
それは黎翔の気遣いなのか
それとももう顔もみたくないという暗黙の答えなのか
本意を知ることが怖くて踏み出す事が出来ない
だが其れをずるずると続けると言う事もできないと言う事も理解していた

だからと言って何と言っていいかが分からない
面と向かって謝ればいいのか
それとも手紙をしたためて潔くここを退去すればいいのか
退去すると言う事を考えるたび
もう会う事はできなくなると言うことに鋭い痛みが胸を打つ
夕鈴はその自分の身の振り方をどうすればいいのか模索していた

そんな簡単に謝れるようならとっくに謝っている
どう考えたって厭な方向にしか流れないのだから
もうここまで来るならとことん怕の看病をしきってからの方が
良いのではないのかもと後ろ向きな考えまでしてしまう始末だ

物思いにふけり溜息をつきながら悩む夕鈴に怕は困ったような目線を向ける

そうしてふ、と視線を上に向けた後
ぴくり、と怕は身体を強張らせた
じわじわと震えそうになる腕をもう片方の手でぎゅっと抑える

「…夕鈴」
「ん?どうかしたの?」

怕は感情を読ませないように平静した声で夕鈴の名前を呼んだ

「少し、眠りたいんだが構わないか?」
「ああ、うん構わないわよ」

夕鈴は怕の申し出に快く頷いた
どうやら怕は今まで培ってきた経験からか近くに人が居ると眠れないようなのだ
死地の境をさまよっていたり
鎮痛剤などで強制的に眠りに着かされていた時期ならいざいらず
徐々に体調が回復してきている今となっては
感覚が鋭敏になり人が居ると眠れないどころか
寝室に人が立ち入れば目を覚ましてしまうのだという

安静にすることが回復につながるため
そういった時は邪魔せずにそっとしておくようにする
そうして何かあれば枕元に置かれた呼び鈴を鳴らすようにしてもらっていた

「じゃあ何かあったら呼び鈴ならしてね」
「ああ、分かった。夕鈴もちゃんと仲直りするように」
「わ、かってるわよ」

眉を下げながら何の疑問も持たず寝室を退室していく夕鈴の後姿を認めながら
掛け布の中で怕は白くなるほど手を握りしめていた





徒桜14につづく


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