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2013_05
06
(Mon)00:00

徒桜 15

はじめましての方はまず先に

徒桜1徒桜14をお読みください


自宅に帰ってきました
拍手お礼文の小話も変更しました



時を遡ること少し前

夕鈴は怕の眠る寝台のある部屋を後にして悩んでいた

ぐるぐると思考が渦巻く
人目が無ければうううと呻きながら蹲りたい気分だ

怕に言われたからではない
いい加減この堂々めぐりの思考にかたを付けたいとは思っていた
だけれどはいそうですかと謝りに行けるのかと言われればそうではない

この数日間顔すらも合わせなかった事が更に夕鈴を追い詰める
どんな顔をして会えばいいと言うのだろう

そんな夕鈴の悩みに終止符を打ったのは老師だった

「おお、丁度いい所に居った、これを陛下に届けてくれんかのう」
「え…」

そう言って渡されたのは書簡でその事に戸惑う夕鈴に

「なあに、いいきっかけになるじゃろう?人に頼まずちゃんと直接手渡しするんじゃぞ?」
「老師…」

すべて分かっていると言うその言葉は思いもかけず夕鈴の胸を熱くさせた
ただそんな夕鈴の感動は老師の次の言葉で霧散する

「仲直り直後の夫婦は燃え上がるからのう。これで念願の世継ぎゲットじゃ!」
「はいはい」

ばちこーんとウインクしながら親指を立てている老師を置き去りに
夕鈴は手渡された書簡を手に政務室へと足を向けた

そうしてたどり着いた政務室前
陛下と会うきっかけを老師が与えてくれたもののそれでもやはり躊躇ってしまう
どのような顔をして陛下に会えばいいか
どのように声をかければいいか脳内で試してみる

すうはあと大きく息を吸って、吐いて
よしっと気合いを入れて足を踏み出そうとした時だった

「こんな所で何をしている」
「うきゃあ!?」

後ろからいきなり声を掛けられて変な叫び声が出てしまった
前方にばかり注意していたものだから後ろからなんて全くの予想外だ
ばくばくと波打つ胸に手をやり後ろを振り返れば
しかめっ面をした柳方淵が背後に佇んでいた

夕鈴と目があった方淵は顰めていた顔を更に顰めさせた
眉の間にこれでもかと皺が寄っている

「政務室に一体何の用だ」

酷い言い草である
反論したいのをぐっとこらえて先程老師から渡された書簡を見せた

「老師から言づかりましてこれを陛下にお渡しするように、と」

夕鈴が手にしていた書簡に一瞥をくれた方淵は
ふんと鼻で息をすると夕鈴を再び睨みつけた

「陛下は今、政務室にはいらっしゃらない。それはこちらで預かろう」
「…いえ、老師から直接お渡しするようにと申し使っておりますから出直して参ります」
「そうか」
「…では失礼いたします」

そう言って踵を返そうとする夕鈴に方淵がたたみかける

「全く妃とあろうものが陛下のお心を煩わせるなどもっての外だ」
「う…」
「妃の役目をもう一度理解された方がよろしいのではないか?」

まったくもってぐうの音も出ない
反論することなく押し黙った夕鈴を一瞥すると
もう一度ふんと鼻から息を吐いた方淵は夕鈴の前から立ち去ってしまった

言い逃げってずるいと思う

反論する余地もないまま方淵は去ってしまった
だけれど反論できたとしても何を言っていいか分からなかった
じくじくと言われた言葉が棘になって胸に突き刺さる
せっかく会おうと決心した気持ちが萎みそうになる
俯きたくなる気持ちを堪えて来た道を戻ろうとした時だった

「お妃様」
「水月さん…」

そこに声をかけて来たのは苦笑した氾水月だった

「後宮に戻られるのですか?」
「あ、はい。陛下はいらっしゃらないと伺いましたので…」
「方淵殿の言いたい事も私どももよく分かるのですよ」
「そうですか…」
「お妃様がいらっしゃらない政務室はそれはそれはもう凍える寒さのようで」

和らいできた寒さがぶり返したようですよと虚ろな目をして
遠くを見る水月にそれほどかとまたも気落ちしそうになった
そんな夕鈴に視線を再び移した水月は
にこりと人のよさそうな笑みを向けて夕鈴に話しかける

「ご存知ですか?」
「…何をですか?」
「陛下から紅珠に後宮への訪れをしばらくは控えるようにとのお達しがあった事に」

そう言えばここ最近は紅珠の訪れも無かったなと思い至った
それはやはり居なくなる妃になど訪ねて来なくてもよいと言う
黎翔の無言の非難だったのだろうか
手にしていた書簡を持つ手が震えそうになる
落とさないようにぎゅっと握りしめて水月の顔を見つめた

「…あの、それ、は」
「ええ、現在お妃様が心砕かれている事に集中させたいからとの事だそうです」

その言葉に一瞬夕鈴は虚をつかれた
そしてそれが意味することをじわじわと理解した瞬間に
じわりと目頭が潤みそうになる
けれどこんなところで泣くわけにはいかないとぐっと堪えた

「…教えてくださってありがとうございます」
「いいえ。以前のように政務室にお妃様がいらっしゃれば寒さが和らぎますゆえ自分のためですよ」

そう淡く微笑んだ水月が
それでは失礼いたしますと政務室へと戻る姿を見送ってから
夕鈴は今度こそ踵を返した

歩きだす足に力が入る
少しばかり滲んだ涙を手で拭うと前を向いた

何が何でも陛下に会わなくては
そう決意も新たに歩きまわってでもと決心していた時に
ふと視界の端に映り込んだものに視線をやり軽く眼を瞠った

「…あれは」

それは黎翔が浩大の先導の元、庭の奥に消えていく姿だった




徒桜16につづく




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