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2013_05
13
(Mon)00:00

徒桜 16

始めましての方はまず先に

徒桜1徒桜15をお読みください

今回の拍手お礼文は
どちらかと言うと
前回分の小話的なものになってます
(今回分で思いつかなかったともいう)





思いがけないここには居ない人物の声がして一瞬反応が遅れる
その隙を狙って怕が駆けだした

「浩大!捕えろ!」
「はいよ~」

怕の駆けだした先に隠れていた浩大がおり立つ
浩大はそのまま怕を捕え後ろ手に拘束した

「っ!離せ!」
「離せと言って離すバカはいないよね」

その目の前の一瞬の出来事に夕鈴は目を見開いたまま固まっている
怕が拘束されたことを確認した黎翔は夕鈴へと向き直った

「夕鈴…」

どうしてここに、と黎翔の目線が語っている

「え、とあの…庭の奥に向かっている陛下が見えましたもので…」

そのまま追いかけてきてしまいましたと答えれば
はあと黎翔が溜息を吐いた

「狙われていたって言う自覚はある?」
「う、あ…はい」

そう言えばそうだったと夕鈴は冷や汗を掻いた
いくらその眼の前の本人がその犯人だったとしても仲間が居ないとは限らないのだ
夕鈴は自身の軽薄さに再び落ち込みそうになった

俯く夕鈴の傍に黎翔が近寄る
黎翔の手がふわりと夕鈴の頭に触れてするりと髪を撫でつけた
そのまま夕鈴の髪を一房持ちあげた

その仕草に夕鈴はふと顔を上げると
苦笑しながらも夕鈴へと笑みを向けていた
そんな黎翔に夕鈴はまたも泣きたくなる

「僕がどれだけ心配したのか分かってる?」
「…はい、すみません」
「あの後王宮に帰って浩大から報告を聞いて気が気じゃなかった」

それは随分前の話で
そんな前から心配させていたのかと思うと
夕鈴の胸が詰まりそうになる

「何にせよ無事で良かった…」
「っ!ごめんな、さい…」
「うん」

泣きそうな顔をしている夕鈴へと笑みを見けて
手にしていた髪を手放して
黎翔は再びするりと夕鈴の頭を撫でた

そうして黎翔は怕へと視線を向けた
すでにそこには夕鈴へと向けていた穏やかな表情はなく
視線は射るように鋭いものへと変わっている

「…とある暗殺者組織の者らしいな」

その言葉に怕がぴくりと反応する

「それなりに腕利きだったらしいな?」
「…どうしてそれを」

その言葉に黎翔はくっと皮肉気な笑みを漏らした

「さて、今回の件は近国の王家が依頼したものだったか」
「…さあな」
「大方、夕鈴を廃すれば自国の王女を嫁がせられるとでも考えたか」
「お偉方の考えることなんて私には分からない」

そうか、と言って少しだけ口を噤んだ黎翔が再び怕へと言葉を向けた

「そう言えばお前の居た組織、今はもう無いと知っているか?」
「…は?何を言って…」

訝しむ怕に黎翔は口の端だけつりあげ述べて行く

「どうやら知らぬようだな」
「だから何を言って…」

そうして黎翔の口から怕へと情報が教えられる

たまたま偶然に跡目争いになったらしく
上層部の人間達がすべて合打ちになった、と

淡々と紡がれる言葉に怕は茫然となる

「…それ、は」
「ああ。実質上壊滅という事だな」

残るところはほとんど雑魚とも言っていい人物たちばかりだ
だからこそこうして少しでも地盤を固めようと怕を急かしたのだろう
残党が逆恨みをして此方に何か仕掛けてくるかもしれないが
浩大や他の隠密たちで何とかなるだろうと考えていた

茫然と黎翔の言葉に聞き入っていた怕が震える声で訪ねてきた

「…楊達、は」

それは黎翔の傍らでこちらも茫然と事の成り行きを見ていた夕鈴が
怕のその言葉を聞きはっと顔を上げた

「何だ?」
「その情報に楊達という人物の名前は書かれていなかったか?」
「楊達?誰だそれは」

怕は一瞬言い淀んだが
黙っていても仕方がないと口を開いた

「…弟、だ」
「弟か?そんな名前の人物はいなかった」

そんな黎翔の言葉に怕は狼狽する

「う、嘘だ!」
「嘘ではない。おまえについて調べたがその様な人物は報告にあがっていない」
「何故だ!本当に調べたのか!?」
「ああ、どこの村の出身とまでは調べることができた」
「なら!」
「だが今現在その様な村はない」
「…なん、だと?」
「そういった村があったと言う事だけは分かっている」
「どういうことだ?」

訝しむ怕に黎翔が嘲笑めいた口調で返す

「暗殺者組織にいたと言うわりには随分と察しが悪い事だな」
「…まさ、か」

どんどんと怕の顔色が青褪めてくる
茫然とした面持ちで怕が問いかけてくる
怕の身体はもうすでに逆らおうと言う気はなく
念のため浩大が拘束しているに過ぎない状態だ

「ああ、そのまさかだろう」
「そ、んな」
「そう言う村があったという情報は確かだ。ただお前がそこを出てからすぐそこの村は滅んだ。どうやら盗賊に襲われたらしいとの報告だがな」
「だ、って手紙が…」
「それらすべてが偽物だとは思いもしなかったのか?」

そして怕はようやく思い至る
自分が信じて来ていたものすべてが偽りであったのだと

「あ、あ、あああああ!」

絶望に染まった怕の慟哭がその場に響いた

「口封じに知り合いを消すのは定石だ。ましてや辺鄙な村。お前ほど目立つ者ならば村中の人間が知っていてもおかしくない」

だから村ごと消したのだろうと淡々と言葉を放つ
その口ぶりに夕鈴は思わず黎翔を咎めるように呼んだ

「陛下!」

「いずれ知ることだ」

何処からか情報が漏れるのを恐れ
尚且つ一番の弱点ともなりえる家族を抑えられては元も子もない
素性が露見してしまうのも避けたい
だからこそ組織は村ごと葬り去ったのだ

怕に告げられたそれはとても残酷で非情なものだった




徒桜17につづく




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