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2013_06
24
(Mon)00:00

徒桜 22・エピローグ

はじめましての方はまず先に

徒桜1徒桜21をお読みください


今回の拍手お礼文はページの一番上に設置します




馬のいななきが聞こえる
散らかった荷物を片付ける人たちにちらりと視線を向けた後
こちらに向けて言葉を放ったのはその集団の長と思わしき人物だった

「なあ、あんた何処まで行くんだ?」
「…北の奥地まで」

そこから国境を超え更に山の奥へと進む
そこが自分が目指す場所だった

目の前の男は何かを考える様に顎に手をやっている

自分はちらりと周囲を警戒するために視線を巡らせる
そうして目に入ってきたのは桜の樹
それを見つめ目を細める

薄桃色の花びらが舞う
王都を離れてもう随分と経つと言うのに
行く先々でこの花を見る
すでに王都ではその花びらはすべて落ち緑の葉が生えてきている頃だ
きっと自分は花吹雪を追いかけながら北上しているのだろう

そう考えている横で何かを思案していた男が話しかけてきた

「なら途中までで構わないんだが頼みたいことがある」

そういって依頼された言葉に了承の意を告げた

 * * * * *

ガタガタと揺れる馬車に揺られながら
外をぼんやりと見ていた

そんな自分に隣に座っていた男が人一人分ほどの空いていた距離を
おもむろに縮め近寄ってきた
思わず懐に忍ばせてある暗器に手をかけてしまったのは仕方ない

そんな動きにも気が付かずに男は親しげに話しかけてくる

「何見てるの?あ、あの花?綺麗だよねえ~桜って言うんだよ。知ってる?」
「……」
「どうしたの?花がきれいすぎて言葉も出ないって?」

話しかけてきた男の距離の近さに思わずのけぞる
そうしていると更に横から言葉が飛んできた

「ちょっとあんた!その人嫌がってるじゃないのよ!」
「ええ~?そう?」

悪びれずに窘めた相手にそう話す男に向かって
少しばかり身を引いて眉を顰めた

「…少し、近いと思う」
「ほら嫌がってる」
「ええ?!酷ぇ!」
「さ、あんたはあっちいったいった」
「ちぇっ」

そう言いながら男はすごすごと側を離れていく
その代わりとばかりに隣に座ってきたのは
先程、男を窘めていた女性だ
今度は適度に距離を開けてはいるが
興味津々と言った表情に内心で苦笑した

「ごめんねえ慣れ慣れしくって」
「…いや」
「あんたがあまりにも綺麗だからさ、あいつ浮かれてるのよ」
「…綺麗?」

言われた言葉に首を傾げる
本来持っていた目立つその金の髪は今は髪染めで黒く染めている
元々の自分の持つ色は確かに目立っていたと自覚はしている
それがなくなればただの普通の人だと思っていたのだが
やはり目の色までは代えられずこの色のことだろうかと考えた

「ええ、そう」
「この目の色がか?」
「…あんた自覚ないの?」

呆れながら笑う女性に更に首を傾げながら
現在乗り込んでいる馬車の中をぐるりと見回した

現在、乗り込んでいるのは旅芸人の一座が移動の際に使う馬車だ
たまたま故郷へと向かっている先で盗賊に襲われているところを助けたのが縁で
こうしてその一座に加えてもらい用心棒として馬車に同乗させてもらっている

「それにしてもあんた強いのねえ」
「…いや、それほどでもない」
「またまた謙遜はよしてよ。でもあんたが居てくれて助かったわ」

あそこで助けなければ誰かしら何かしら犠牲になっていただろう
それに関しての謝辞は当然のことであるし
感謝されるのは別段おかしな事でもない

だが自分にとってはその程度の事で礼を言われるいわれはないと思っているし
何よりも刃を振るって感謝されることなど今までなかった事だ
その事に表情には出さないまでも内心戸惑っていた

「そういえばさ、北の奥地に向かうって言ってたけど何かあるの?」

そう唐突に隣の女性が訪ねてくる
一瞬言葉に詰まったがぽつりと言葉を返した

「…故郷に」

そう、向かうのだ
果たせなかった約束を少しでも守るために
もううっすらとしか思い出せない故郷
それなのに鮮明に思い出せる満開の桜と言う花が咲き誇っていた小さな村

あそこで愛しい弟と別れた
それが今生の別れとなることなど露知らず

今でも思い出すあの儚げな記憶
だから向かうのだ
例えその村が今はもう無いとしても
全ての思い出を昇華させるために

自己満足だとつくづく思う
だけれどもそうでもしないと進めない

記憶の底に残る幸せとは思えなかったあの頃
あの子だけが自分のすべてだった
そのすべてを手放したのは自分
今思えばいくらでもやりようがあったのに
幼さだけでは言い訳にもならない
だから自らでその思いに区切りをつけなくてはならない

忘れることはない
忘れることなど許されない
多くの人をこの手であやめたことは事実なのだから
一生その罪は抱えて生きていかなければ

許されたいとは思わない

だけど

せめて

そうしたら

望んでもいいのだろうか
少しぐらいは自分のためにだけ生きる事を
贖罪を胸に抱えそれでも生きていけばいいのだと
そう望んでくれた人が居るから

できる事なら

再び会いたい

あのお人好しで
表情豊かな優しいあの人に

花びらが舞う
あの樹の下で再び生きる意味を与えられた

その人が最後に呼んでくれた自分の名前
もう捨てたと思っていた本当の名前

――楊華

優しい声音で
優しい笑みを向けてくれた人

儚げな花びらは舞い落ちて
道に薄桃色の絨毯を敷く

まるで何かに導かれているようにその先は延々と続いている

花が落ちた後の樹には青々とした葉が生い茂る
新緑の色に染められた木々は
その花が持つ儚さの印象など捨て生命力に満ち溢れることだろう
そうして生きていくのだ
生きていけるのだこれから先ずっと

あの子から貰った飾り玉は今も首から下げている
これは戒めだ
忘れることが無いよう
愚かな自分への永遠の枷となる

人の世は常に無常で溢れている
せめて悔いなく生きると
いつか彼女に言われたその日その日を大切に生きて行かねばと

胸元にいまもある事を確認するかのように一度ぎゅっと握りしめ
進んできた道に残る轍を目に留めながらそっと馬車の揺れに身を委ねた





おしまい

本編はこれで終わりですが
番外編が2話ほどあります
それでもって徒桜は完結とさせていただきます





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