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2013_07
01
(Mon)00:00

明日ありと思う心の徒桜 【徒桜番外編】

こちらは徒桜(全22話)の番外編です

はじめましての方は

徒桜1徒桜22 を先にお読みください




『夕鈴には色々聞きたいことがあるからね。そう、今回の事を含めて色々と、ね』

そう言われてぞわりと背筋に冷や汗を掻いた事を夕鈴は今更ながらに思い出していた

 * * * * *

新緑が目にまぶしい

怕、――楊華、がここを去った後
散りかけていた桜はあっという間にその花弁を落とし
その花びらは樹の根元に薄桃色の絨毯を敷いた

花びらが散りながら同時に芽生えていた青々とした緑の葉が
あっという間にその場所を取って代わった
今はもう可憐に咲き誇っていたことが幻なように
生き生きとその枝に葉を茂らせている

楊華が去った後の黎翔はその後始末に日々を追われ
夕鈴と会う事はあっても長く話ができるわけでもなく
少しのお茶とたわいのない世間話を簡単にして夕鈴の元を去っていく

それは夕鈴が政務室に訪れても変わりなく
むしろ今までのことが無かったかのようにふるまわれるその姿は
夕鈴だけでなく周りも困惑させていた

だがそれもしばらくの事

いつものごとくの夫婦喧嘩だったのか、と周囲は納得し
夕鈴にとってはまたしても狼陛下をふりまわす妃だと
非常に不本意な噂を流される羽目となった

それもまあ黎翔へととった行動に鑑みれば
居たしかたないと多少の不満は残すものの
そんな夕鈴も日常の流れに身を委ねて行った

そんな日々が続いた昨今
ようやく楊華のいた組織の後始末や
残党の処遇があらかの目処がついたと浩大から教えられ
これでようやく黎翔もまとまった休息をとれるだろうと夕鈴も安堵した

それが夕鈴にとって危機にほかならない事だと気がつくには
些か時間が経ち過ぎていたのだった

 * * * * *

「さてそれじゃあいろいろと教えてもらおうかな」
「……っ!」

にこにこと上機嫌な黎翔の傍らで羞恥で顔を真っ赤に染めているのは夕鈴だ

それもそのはずで現在の夕鈴の居場所は黎翔の膝の上
逃げ出さないように腰はがっちりと黎翔の手でホールドされている

「うううう…」

顔を真っ赤に染め上げて呻く夕鈴を見ながら黎翔はにっこりと笑む

今回の暗殺者騒ぎの件はもうほとんどと言っていいほど処理は終わっている
黎翔が危うんだ暗殺者と夕鈴との関係も
暗殺者が女性だったと言うことでほぼ心配はなくなっている

そう、いわば今回の夕鈴への行動は黎翔にとってのご褒美に他ならない

夕鈴はその事に気がつかないまま
黎翔への不義を行った事を後悔しこうして甘んじて黎翔に膝の上に抱かれている

もうここらあたりで、と耐えきれずに夕鈴が離れようと身体を捩れば
暗殺者の件で傷ついたと黎翔がそれとなく小犬の表情で仄めかせば
夕鈴は途端に大人しくなる

まったく暗殺者様々である

そんな黎翔のお腹真っ黒な思惑に気がつく事もなく
夕鈴は羞恥に耐えながらも黎翔の膝の上で大人しくしていた

 * * * * *

「まあそれにしても本当に偶然ってあるもんだね」
「そうですね」

それは夕鈴と楊華との出会い

あの時夕鈴の実家の裏庭に楊華が倒れていなければ起らなかった出会い
それは本当に偶然と言って他ならない

けれど、それでもと夕鈴は思う

今回の出会いは必然であったのではないのかと
それがただの偶然だったとしても夕鈴はそう思って居たかった
それだけ楊華との出会いは夕鈴にとっても必要なものだった

心の奥で不安に思う事をまざまざと思い至らされて

明日の命が簡単に散りゆく事を知らされた
病でも、事故などでもなく人為的に仕組まれていることなど
このアルバイトを始めて散々に身に沁みていたはずだったのに

それは日々平凡に生きて来た夕鈴にとっては
想像にしがたいものでどうしてもその真実が薄れてしまう

だけれどもそれがこの世界では当然で
日常的に行われている駆け引きの一つなのだと理解させられた

それは黎翔にも言えることだ
国王として国を盛り立てて行こうとはしているが
どうしても刹那的に見えてしまう

いつあるか分からない命
それは現在の黎翔の立場を明確に物語っている

国王と言う立場から命を狙われることが多いと言う事も知っている
実際に平穏無事に統治しているわけではなく
言動からいまだに多数の暗殺者が送られてきていることは確かなのだ

そう再確認したら夕鈴の肝が冷えた

黎翔は国のためを思い盛り立てて行こうとしている
そんな思いがたった一刃で消え去ることだってあるのだ

その事を再び思い出してぶるりと体を震わせた
そんな夕鈴を目ざとく見つけるのはいつも黎翔だ

「どうかした?」
「え?あ…いいえ」

俯き思案気に黙ってしまった夕鈴を黎翔が心配そうに見つめていた

縁起でもない
黎翔が討たれることを想像するだなんて

夕鈴はそう思い嫌な想像を払いのけようと首を振った
そんな夕鈴をみながら黎翔は少しばかり苦笑する

「大丈夫だよ」
「え?」
「そうやられるほど弱くはないつもりだから」

その黎翔の言葉に夕鈴はぽかんと口を開き
驚きの表情を隠すことなく黎翔の顔を見つめた

その表情の夕鈴を面白そうに見つめ
更に相好を崩した黎翔がにこやかに告げる

「いままで遅れをとったことはないしね」

そうにやりと笑った黎翔の顔を驚きの表情のまま見つめ
じわじわとその言葉の意味を沁み渡らせていく

そうだ、確かに黎翔は強い
だけれど不覚をとることが無いとはいえない
そう戸惑っているのが夕鈴の表情からも窺えたのか
少し苦笑しながらも黎翔は言葉を続けた

「まあ僕も…多分彼女もね運が良かったんだ」

立場は違えど生きて行く場所は同じ
立ち続けるとするならば足元は血に濡れていく

「だからって安々とこの場所を譲るほど優しくはないよ」

それは即ち孤独を貫くことを意味する

「…なら、」
「うん?」
「それなら私はできる限り陛下の傍に居ます」
「…うん」

儚くてもいい
無情でもいい

だって花が散った後はあんなにも生き生きとした葉が生えてくるのだ
儚く散り去った後には生命力に溢れた葉が繁るのだから

夕鈴は窓を見る

窓からのぞく空の色が見える
初夏の近付く空は何処までも蒼い

それは楊華の目の色を思い出す

空の青よりももっと深い蒼色だったけれど

そんな空の下で彼女はきっと生きて行く
それは自分たちにとっても同じこと
そう信じている

そう思いながら夕鈴は黎翔へと向き直り笑みを浮かべた





別タイトル
夕鈴おしおき の回(笑)
あんまりお仕置きになってないですけどね
原作の方でも最近おひざだっこがデフォルトになりつつあるし




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